第4章 病魔【P128 ~ 🫖*】
(心配、してくれているの……?)
自分の杞憂で終わりますように。心のなかでそう祈る。
生成り色のシュミーズ姿となり、彼の手を借りながら、黒曜のドレスに身体を押し込んだ。
それは華やかさを滲ませつつも、何処か礼装めいた雰囲気の衣裳だった。
立て襟を薄鈍色のレースで飾り、デコルテからウエストにかけては銀色の釦が縦に五つほど並んでいる。
袖は腕の線にぴったりと寄り添い、袖口には襟元と同一の繊細なレースがちらりと覗く。
マーメイドラインを描くスカート部分には、
ところどころにきらきらと煌めく水晶の粒が織り込まれ。
その裾は三段重ねのフリルとなってひらひらと揺れており、
縫い付けられた菫の花の刺繍がなされた銀色のレースが控えめに煌めいていた。
「主様、こちらのローブもお召しになってください」
その上から漆黒のローブを身に纏う。
地は黒曜でも、フード部分の裾にほどこされた
ゴールドトリム(フード縁になされた金色の連続模様)、
両肩の金色のエポレット(軍服由来の肩章)、
ケープ部分に施された金色の装飾ブレード、
襟元で煌めくエポレットと同色の装飾トグル留め、
腰を留めるサッシュベルト、
ローブの両裾にほどこされた金色のダマスク模様、
左肩から垂れ下がるハンキングベルト(装飾用に垂らしたベルト)の装飾がある故に、
地味という印象は見受けられない。
「このローブって………、」
思わず口にすると、鏡ごしに微笑むフルーレ。
「グロバナー家の会議に出席するための礼装です」
彼の手で編み込みを解かれ、ふわりとややクセのある青灰色の髪が踊り流れる。
すっ、……すっ………と櫛ると、
顔の両サイドの髪を三つ編んで、ドレスの共布の黒いリボンを飾った。
「終わりましたよ」
「…………………………。」
ぼんやりと揺蕩う思考を抱いて、その瞼を伏せた。灰色の長い睫がわずかに震える。
「主様……?」
その声に思考を覆っていた靄が消え去る。
「ううん、何ででもない」
微笑って見せるけれど、その唇は何処か冷たいものを滲ませていた。