第5章 その日々は終わらない
浴室から出ると、ぐったりと座り込む紬の体をアキは優しく拭いた。
泣く気力すら失われ、紬は呆然と宙を見つめていた。
「…ねぇ……紬ちゃん」
アキはそんな紬の体をぎゅっと抱き締め、耳元で囁く。
不気味なほど優しい声色で。
「初めて君を見た時…俺は運命だと思ったんだ。君ほど俺の好みにぴったりあう女の子…どこを探してもいないよ」
抱きしめる手に、力がこもる。
「でも君の隣にはいつも男の子がいた…泉くんとかいう…彼。いつも君のそばにいて…許せなかったんだ。君を彼から引き離さないといけない、そう思った。そしてそれは無事に成功した」
愛しい幼馴染の名前に、今はもう懐かしい外界での日々が蘇る。
「君は死ぬまで一生…俺のものだ」
雫が一滴、床に落ちる。
それは濡れた髪から滑り落ちたものなのか、瞳から落ちたものなのか。
それは彼女自身にも、わからなかった。