【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第9章 さよならヒーロー【2月】
side.名前
「名前?名前?」
「…ん…雅治くん」
優しい声に導かれ、そっと目を開ける。
心配そうな表情で私を見る雅治くん。
また悪夢…。
「名前。また泣いとった」
「…ごめん…」
「ええよ。おいで」
「うん」
彼の胸に抱き寄せられて安堵する。
温かい。
最近は、雅治くんがいなくなる夢ばかりみる。
薄々、気づいてはいたの。
きっとヒーローは何かを得て、漫画の中へ帰ってしまうことを…。
雅治くんがいなくても、生きていける。
ただ、ご飯がいつもより美味しくなくて。
ベッドが広いと感じるようになるだけ。
それでも願ってしまうの。
泣き虫な私の側にいて?
一人にしないで?
この温もりだけは、手離したくないよ。