第4章 遭遇
「それじゃ、行きますか!ついて来てくださーい」
「あ?何でそうなんだよ?」
爆豪の手を引いて、意気揚々と歩き出すさくら。
「だってさっき何でも言うこと聞くって言いましたよ?」
「それは…そうだが…アテはあんのかよ」
「んー…ブラブラ?とりあえず適当に歩きます!そんで気になったお店に入ります!」
「何だそれ、テキトーか!」
「はい、テキトーで」
おかしそうにさくらが笑いながら言う。
「テキトーに歩いて、こんな風に勝己くんといっぱい話したいです」
「あ?そんなんでいいんか?」
「それがいいんじゃないですか」
「変態か」
今日はなかなか無い休みを取ってさくらのしたいことをしようと決めていた。
そんなさくらが歩きたいと言う。
言われるがままに人混みの中を歩き始める。
さくらは「これ、可愛いー」などと言いながら、店先のぬいぐるみやら色々な物を手に取っては、棚に戻した。
こんなんが楽しいんか?
そんなことで良いのかは分からなかったが、さくらは嬉しそうだ。
そして自分も。何気ない話をしながら歩く、それだけのことなのに、不思議と周りの景色が鮮やかに見えた。
これから忙しくなる。
そう分かっていたから、さくらと少しでもこうして過ごせることが嬉しかった。
しかしいつか聞かなければならない。
あの件についても。
爆豪は忘れていなかった。
「あ!これも可愛くないですか?」
「さっきから可愛い可愛いウッセーなぁ。ハッ!っつーかそれはブッサイ!…っつか、お前にそっくりだわ」
爆豪は小さなキーホルダーについたマスコットを見て思わず吹き出した。
「え、ヒドっ!え、でもやっぱり可愛い。団子鼻で目が離れてるところとか」
「やっぱそっくりじゃねぇか」
「チーン…」
爆豪はふふんと鼻で笑った。