第1章 街中
ヒナは寂れた酒場で住み込みで働く、下働きの少女だった。
久しぶりに休みをもらい、一人で買い物に出かける予定だったが、
店に来ていたルイが付き合ってくれたのだ。
彼は常連でよく話す仲であった。
客である彼に手伝わせるのは申し訳なかったが、助かった。
涼しげにさりげなく重い荷物を持ち、そしてヒナが負い目を感じぬように軽いものは彼女に持たせる。
その心遣いを、ヒナは感じ取っていた。
「助かりました!ルイさん優しいです!!」
「はは,まあ気軽に使ってよ。可愛いヒナちゃんの頼みならなんでもしてあげるからさ」
「へっ…あ、ありがとうございます!」
ヒナは照れて顔を伏せる。
男性にそんな言葉をかけられるのは不慣れで、どう反応すれば良いか、戸惑った。
そんな彼女を見下ろし、ルイはふっと笑う。
そしてさりげなく、その肩を抱いた。
「そうだ…ちょっと休憩していかない?このまま帰るのもったいないよ」
「そ…そうですね!私ももっとお話ししたいですしー…」
「二人きりになれるとこ…知ってるんだ。一緒に行こう」
「は、はい!」
優しく、しかしどことなく力強くぐいと肩を抱かれた。