第5章 支配*
「怖いのはやだ。優しくしてくれないと…」
「優しくしないと…何?」
凄く悲しそうな声に、フッと笑みが溢れてしまうり
悟さんの弱点は知ってるの。
「海に帰って、魚になっちゃうよ?」
悟さんはキョトンとした顔をして、笑い始めた。
「ぶっ!ふふっ!あははっ!」
「やっと笑ったね」
「参ったよ!ははっ!降参!」
「じゃあ、優しいキスして」
「仰せのままに」
甘くて啄むようなキスをされる。
「私、少し寝るから、悟さんお仕事行っていいよ」
「いや。今日は僕も休むよ」
「平気なの?」
「僕は仕事より名前の方が大事」
ギュッと抱きしめられて、首元に擦り寄ってきた。
この28歳になる男は、すごく甘えただ。
私も彼を見習って。
仕事より悟さんを優先しようと思う。
婚約者なんだから、本来そうあるべきだよね。
昨日の彼を見てしまったら、もうそうするしかない。
だから優しく支配して。
まるで呪いのように愛し愛される。