第4章 婚約
「名前は先代の六眼持ちが、約束を交わした女性だよ」
「えっ?あの?」
「そう。それが彼女」
悟さんのお母さんが驚いている。
けれど私は全く話が飲み込めない。
「悟さん。どういうこと?」
首を傾げて見上げると、またへらりと笑う。
「名前には言ってなかったね。先代の六眼持ち。つまり僕はね、君のことを書物に遺していたんだよ」
「貴女が悟さんの愛した精霊だったのね」
精霊っていうのは、過去の私のことかな?
確かに海の中の情景が記憶にある。
「だから彼女に血筋は関係ない。遺言通りの女性だよ」
キッパリと言い放つ悟さん。
遺言って何?
まさか今世で婚約できるように、遺言を遺してくれてたの?
「そういう事なら認めよう」
「そうね。先代の遺言通り、私達は二人の婚約を認めます」
悟さんのご両親は、優しい顔付きで私を見る。
「あ、ありがとうございます」
私は慌てて頭を下げた。
「名前さん。悟さんをお願いね」
「我儘な息子で申し訳ないが、宜しく頼む」
「はい。私こそ、不束者ですが。どうか宜しくお願い致します」
悟さんのお父さんとお母さんにもう一度、きちんと頭を下げる。
過去から今へ。
悟さんの想いが受け継がれていた。
それを知ると涙が出る。
私はこんなにも愛されていたんだね。