第16章 不穏*
昨日の事件で亡くなった人もいたようだ。
私の中で、益々不穏な気持ちが高まる。
蓮を悟さんに任せて、私は硝子さんに腰を治して貰っていた。
「五条のことが心配か?」
「分かります?」
「昨日あれだけ負傷者が運ばれれば、不安にもなるだろ」
「…亡くなった人も…いたって…」
「呪術師は常に死と隣り合わせだ」
「そうでうね」
病気で亡くなるのは何人も診てきた。
でもこれは違う死だ。
「あのクズは日本に数人しかいない特級呪術師だ。あまり気を揉むな」
「…はい…」
硝子さんの言葉は不思議だ。
悟さんと付き合いが長いせいか、少し心が軽くなる。
「はい。終わり」
「ありがとうございます」
漸く歩けるようになった。
医務室を出て、悟さんと蓮がいる場所へ向かう。
蓮が悟さんのサングラスを取りあげて、はむはむしている。
そんな2人の姿を見て、眉がハの字になった。
和むと同時に心が痛む。
いつか蓮も悟さんと同じ呪術師になる。
そういう家系だ。
私はいつまで蓮を守ってあげられるんだろう。