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人生を愛し、自分を愛し、花を愛する

第4章 幸福な最終日








首を傾げながら、真琴が笑う。










そんなに終わらせたくないなら、


終わらせなければ良いじゃねぇか。










そう思ったのに、




いや、よっぽど言ってやろうかと思ったのに。












まるで喉の奥に蓋がされてしまったように、


言葉が出ていかなかった。












自分達の立場、


生きる道、


目指す物。









並べればきりがなく、


それが無理だという事は、



考えなくても分かる話で。












きっと、真琴はそれが分かっているから、








決別の為にこの一ヶ月の共同生活を持ちかけたのだろう。











その時、


俺はそう思っていて。













「俺は、別にいやじゃなかったぜ。お前と、夫婦やるの。」













それが、


精一杯の自分の気持ちを表す言葉だったのだ。











涙をすくってやりながら唇を持ち上げてやれば、


真琴はくしゃりと顔をゆがめ、








また大粒の涙を零し始めて。












「お前、そんなに泣く奴だったか?」











と努めて優しく言いながら抱きしめてやると、


ついに真琴が声を上げて泣き出した。












皺が寄るくらい掴まれる部屋着。












それが、じんわりと濡れるのが伝わる程の量の涙。












これを止める術さえ持っていない俺には、



もう言ってやれる事なんて一つもなくて。






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