第16章 たったひとつの (五条悟)
side you
ゆるゆると前後に身体を揺らして口内を弄ぶ悟。少し長い前髪をかきあげて時折甘い吐息を漏らしている。
「あ゛〜っきもち、」
『も、ゃだ…っ』
「恵の跡つけて帰ってきたが悪いんだよ。」
肩についた噛み跡を指でなぞって、それから辛そうに顔を歪める悟。こんなのまるで嫉妬してるみたい。本当に私の事が好きだって言ってるみたい。
「恵のことは僕が忘れさせてあげる」
ずるり、と口内から大きなモノが引き抜かれて一気に酸素が入ってくる。
『っけほ、はあ…っはあ、』
恵くんの残した跡を消すように上からキツく口付ける悟。噛み跡が付くほど強く噛まれたのは私が覚えてる限り2回くらいだった。何度も甘噛みを繰り返してたけど多分あれくらいじゃ跡は残らない。なのに、それを知っているみたいに恵くんが口付けた何倍もの跡が身体中に散りばめられていく。
「恵の付けた跡なんて分からないくらい僕で染めてあげるからね。」
『もう十分でしょ…?』
「足りない。が僕のって刻ませて。」
『だから私は悟のじゃ…っぃた、い!』
「僕のでしょ?」
『ちが、う…ッ』
「僕はのものだよ。僕の全部あげられる。」
首筋に唇を寄せた悟の顔を手で押し返す。さらりと白銀の髪が触れて蕩けた碧瞳が私を見上げた。
『首はだめ。』
「なんで…?」
『なんでって…見えるから!』
「見えるから付けるんだよ」
『…っや!付けたら嫌いになる…っ!』
「え、それはずるくない…?嫌に決まってるじゃん。」
私の首筋から唇を離して、代わりに頬に口付けを落とす悟。腰に腕を回して甘えるように何度も何度も。
「好きだよ。嫌いにならないで。」
『…っならないから離して…?』
「やだ。離したら僕の腕の中から逃げるでしょ?」
『…逃げない、から。』
「じゃあ、少しだけね。」
力の抜けた腕はまだ私に巻きついたまま。抜け出すのも留まるのも私次第ってやつだ。重たい腕を持ち上げて身を捩らせると一瞬その腕に力が入った。
『ちょっと悟…っ』
「ごめんごめんついね笑」
反射で、と付け足した悟が今度こそ私の身体から腕を離した。