第16章 たったひとつの (五条悟)
私が教室に着いたとき
私以外の3人は既に揃っていた。
「あ、昨日どこいってたのよ〜」
『おはよう野薔薇。ごめんなにか用事あった?』
「おはよ、あんたが見たがってた映画伏黒がDVD持ってたからみんなで見ようと思ったのに部屋にいなかったから」
『ごめんね、明日はどう?』
「今日じゃだめなの?」
『今日は放課後五条先生に稽古付けてもらう予定だから多分夜は起きてられないや。』
私と悟の関係を知ってるのは恵くんだけ。私が悟に連れられてここに来たあと、そんなに経たずして恵くんもここに来た。幼馴染みたいなものだと思う。
「それは仕方ないわね。なら明日にしましょ!」
『ありがと助かるよ』
「。」
『うん?』
遠慮がちに私の名前を呼んだ恵くんが腰掛けたまま私に頭を差し出す。疲れたりするといつも頭を撫でられに来るのは昔から変わらない。
『おはよう恵くん。夜中の任務続いてたよね。お疲れ様。』
「はよ…ん、ありがと。」
見た目よりも柔らかいその髪に触れて頭を撫でると目を細めて頬を擦り寄せる。相当疲れてるんだろうなぁ。まるで猫みたい。
「あぁ!ずりい伏黒ぉ!!俺も!俺も撫でて!」
ぴったりと隣に立ってこてん、と私に頭を傾ける悠仁くん。その頭に触れるとニコニコとして可愛らしい。
『昨日は急にごめんね、明日はみんなで一緒に映画見ようね。』
「ううん、急すぎて頭追いつかんかったけど平気よ!明日楽しみにしてる!伏黒ん部屋でいーの?」
『んー、わかんない。恵くんの部屋行っても大丈夫?』
「だめっつっても来んだろ」
『じゃあ恵くんの部屋集合だ。』
言い方はぶっきらぼうだけど恵くんが本当は優しいってみんな分かってる。
「よっしゃー!俺お菓子もってくー!」
「ちょっと肌荒れるじゃないジャンキーなのはやめて」
「わーってるって!」
独りぼっちだったかもしれない私にこんなに大切で素敵な仲間がいることに、ふとした瞬間とても感動することがある。例えば今とか。大好きだなって…ずっと一緒にいたいと心から思う。