第15章 青の日々 (及川徹)
部屋に入ると立ったままいる彼女がなんだか上の空みたいな顔をしていてますます不安が頭をよぎる。
「はい、ここ座って。荷物も置いて。」
『…ごめん』
「え、なんで?」
『こんな時間にお邪魔して…及川も部活で疲れてるのに。』
俯いたままのちゃんは今まで見た事のないくらい弱っているように見えた。
「俺が強引に連れてきただけだよ気にしないで。」
『ありがとう…』
こんな風に素直な彼女を初めて見る。
「…あの告白って誰からだったか聞いてもいい?」
原因はきっとそれだから。
ちゃんを傷つけるなんて許せない。
『告白では…なかったかな。』
「え?」
『あの手紙は女の人からで…告白とかじゃない。男の人もいたけど告白はされてない。』
「え、じゃあ誰から…」
『3年生の人達だった。バスケ部のあの先輩の元カノと及川のこと好きな人が何人か。』
「え、待ってよ。何もされてないよね!?」
『…っ及川には関係ないよ』
「関係なくない!俺の大切な人が泣いてるのに関係ないわけない!それに俺の事好きな人がって言った!」
自分でも大きな声を出してしまった自覚がある。ピクリと揺れた肩に触れると微かに震えていて華奢な手がスカートの裾をきゅっと掴んだ。
「ごめん、大きい声出して…」
『…っ、』
「あ、唇噛んだら駄目だよ。」
下唇にかかる歯に親指で触れて俺の指を噛ませればうっすら滲んだ血が見えて痛々しい。
『及川は…なんで私なの…っ』
「え、別に理由とかないけど。」
『じゃあ私じゃなくたって…っ「やだよ。俺ちゃんじゃなきゃやだ。すっごい好きなんだよ。ちゃんじゃないなら一生彼女できなくていいくらい。」
これは本音。それくらい好きだって伝わって欲しいから。俺以外を選ばないで欲しいから。
「何があったかちゃんと教えてほしい。」
それから彼女はぽつりぽつりと話し始めた。