第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
side角名
スクイズもジャージもやっぱりあの人たちの仕業だった。分かっていたのに腹が立つ。あの時ちゃんの声は震えてた。俯いてた。涙を堪えてた。彼女を悲しませるものが全て無くなればいいのに。
無くならないなら俺が守るから。
もう気持ちはバレてるし。
いつも合わせてくれる目は部屋に入ってから1度も合わない。ちゃんの瞳に映りたくて、意識して欲しくて、名前を呼んだ。
「ちゃん」
『はい』
やっと顔を上げて俺を視界に映すとすぐに逸らされる。
「意識してくれてるって思っていいの?」
『えっ』
驚いてもう一度俺を視界に映した彼女の隣に腰を下ろせばあの甘ったるい香水とは全く違う優しい匂いが鼻をかすめる。
「侑のせいでバレちゃったから俺はもう隠さないよ。」
『っぇあ、あ…えっと…でも私』
「分かってる。彼氏でしょ。…好きな子に彼氏がいたら好きになっちゃだめなの?」
『そんなことは…ないと思うけど。』
「それに…っあの人より俺の方がずっと前からちゃんのこと好きだったのに。」
『知らなかった…。』
「うん、言ってないもん。言ったらちゃんのこと困らせるでしょ。だから諦めようと思ってたのにこっち来るなんて聞いてないよ。こんなの諦めない方が無理。好き…ちゃんのことが好きだよ。」
あーあ…言っちゃった。
このままずっと好きでいられるなら、そばにいられるなら。伝えないままでいいと思ったりもしたけど。今日は朝からいろんなことがあって、彼氏も良いとは言えないような人で、そんなの俺に守らせて欲しいと思うでしょ。ちゃんは俺のだからって言える立場になりたい。
『…わたし…っ彼氏がいるから角名くんの気持ちには応えられないけど…でもこれからも近くで支えさせて欲しいと思ってる。最高のプレーができる環境を少しでも私に手伝わせて欲しいと思ってるよ。』
心のどこかで期待していたのか、ズキズキと痛む胸。視界が狭くなってくみたいな感覚。失恋てこんな辛いんだっけ…耐えられないかも。
でも…
「…っ諦め…ないから。」
諦められない。好き。
どうしようもなく好き。
絶対に俺のことが好きって言わせてみせる。
to be continued…