第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
ちゃんの走っていった方向を見つめたまま固まっている俺のジャージの裾がくいっと引っ張られた。
「角名ぁ?」
「…手、放して。」
冷たく言い放つと瞳を潤ませて上目遣いで俺を見上げる
「あの子のどこがいいの…!」
「あんたには教えない。ちゃんに近づかないで。次傷つけたら俺あんたに何するかわかんないから。」
何か言いたげに口ごもってたけど俺は背を向けて体育館へと急いだ。
しばらく経ってもソワソワした様子のちゃんとは目が合う度にバッと逸らされてしまう。そんなの意識してるって言ってるようなもんじゃん…期待していいですか?
「さん顔赤いで。大丈夫か?」
『へあ…っだ、大丈夫ですっ』
北さんにも心配されてるし。大丈夫と言い張る彼女にうーんと唸った北さんが俺に視線を向けた。
「それならえんやけど。…あ、角名」
「はい」
「さんもしかしたら体調悪いかもしれへんから気にかけといてほしんやけど頼めるか?」
「もちろんです。ずっと見てます。」
「ずっとは見んくてええねん」
「体調悪くなったらすぐ俺に言ってねちゃん。」
『ぅ、ん…』
さらに頬を染めたちゃんを見て1年が寄ってくる。
「さん熱ですか?」
『あ、ううん…っ少し暑くて…!』
「座ってた方がいいかもですよ!俺イス持ってきます!」
すぐにパイプ椅子を手にした後輩が戻ってきて彼女を座らせる。背中をさすったり飲み物を持ってきたり。
『ごめんね…ありがとう』
「いつもお世話になってますしこれくらいさせて下さい!」
「俺達もさんのこと支えますから!」
「さんがいるから俺達頑張れてるんすよ」
既視感半端ない。目を離すと後輩に囲まれてた中学時代のちゃんを思い出す。
「ちゃんは相変わらず後輩人気すごいね。」
『いやいや…でも。少しでもみんなの力になれてたらって思ってるから…こんなこと言って貰えるのはありがたいね。』
「そんなの、俺だって思ってるよ。ずっと。ちゃんがいるから最高のプレーができてるし頑張れる。だからずっとそばに居てくれなきゃ困るって…いつも思ってるよ。」