第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
スマホを探そうとベッドに腰掛けたつもりがそのまま背を付けて寝転がってしまった。風邪引くのちょー久しぶりでしんど…。ちゃんに謝んなきゃ…。
『角名くん…!』
「…え、帰ったんじゃ…」
ガチャン、と玄関から音が聞こえて近づいてきた足音。倒れ込むようにベッドに横になる俺を見て慌てたような声が耳に届く。
『…ひとりだって言うから何も食べてないんじゃないかと思って…家から色々持ってきたんだけど。あ、迷惑だったらすぐ帰るから!』
「迷惑なわけ…気遣わせてごめんね。逆に男のひとり暮らしの家上がってけなんて言ったから怖がらせたのかと…。」
『そんなわけないよ、何か作るから角名くんは横になっててね。食欲はある?』
「え、ちゃんの手作り…?」
『うん、キッチン借りてもいいかな』
「あ、もう好きに使ってもらって…正直今日何も食べてなかったから助かります。」
しばらくして美味しそうな匂いが部屋に立ち込める。匂いに釣られるようにキッチンへ向かうとエプロン姿のちゃんが鼻歌まじりに料理をしていて、夢みたいな光景に頬が緩む。
「超いい匂いする…何作ってんの?」
『お粥だよ〜』
「え〜これお粥なの?めっちゃうまそ。お腹すいてきた。」
『食欲あるって言ってたからトマトリゾット風粥にしてみたの。食べられるかな?』
「やば、確定でうまいじゃん…」
熱いから気をつけてね、とテーブルに運んでくれたちゃんがキッチンに戻って再び料理を再開している。
『今週分だけだけど作り置きしておくからチンして食べてね』
「え…まじ?」
『いつも助けてもっらってるもん。これくらいさせて?』
「ほんっとにめっちゃ助かります……」
『良かったあ!』
「てかこのお粥まじで飛ぶほど美味いです…ありがと。」
『あ、ほんと?私もそれ好きだから角名くんのお口に合って良かったよ〜』
なんっなの?天使なの?天使だったんだ?まず俺の家にいることが夢みたいだし、その上看病までしてくれるってなんなの。前世の俺の行いが良かったのかな。前世の俺ありがとう。