第13章 お気に入り(松野千冬)
side千冬
「あ、千冬きた!」
武蔵神社に到着するなり駆け寄ってきたのは八戒。
「昨日は急に帰ったりして悪かった!」
「ううん、兄貴も珍しく機嫌良かったし。ちゃんといたのは驚いたけどね。」
そうだ。そうだった。
俺黒龍の大将に怒鳴ったんだったわ…
「俺のことなんか言ってたか…?」
「ううん?千冬が兄貴に怒鳴った時はヒヤヒヤしたけど全然だったよ。むしろ楽しんでた?かな」
「そっか、なら平気か…」
「じゃなくて!千冬ってちゃんのこと好きだったの!?手なんて引いて連れてっちゃうから驚いたぜ」
「ん、まあ…あとで皆には言うけどよ。」
「うん?」
「その、えっと、えっと…『私たち付き合うことになりましたっ』…さん!?」
『だって千冬くんがなかなか言わないから』
「ぇえ!?」
「へへ…っなんか照れるっすね」
「んだよ八戒でけえ声出して…」
驚いた八戒の声に反応したのは三ツ谷くん。一緒にいたドラケンくんとマイキーくんもこちらを振り返った。
「た、タカちゃん大変!千冬に彼女できた…っ!」
「…は?」
「えー!千冬の嫁会いたい!連れてこいよ!ほら電話!」
俺の特服のポケットにガッと手を突っ込んで携帯電話を取り出したマイキーくんが電話で呼び出そうと目を輝かせている。
「あ、でも俺の彼女 『私だよ!』
「…え?」
『わ!た!し!千冬くんの彼女!』
「「「はぁぁあ!?」」」
「です」
「まじか、え、千冬お前騙されてね?脅されてる?」
『おいこら三ツ谷もっぺん言ってみろ』
「口悪すぎだろ大丈夫かよ千冬…」
「俺には勿体ねぇくらいの人っす。でも俺が絶対幸せにします。」
「なんだなんだプロポーズか千冬ぅ」
「場地さん!!」
やや遅刻気味にやってきた場地さんが俺とさんを見て嬉しそうに笑うから胸がぎゅうっと締め付けられる。この人の協力なくしてこの結果はきっとなかった。
「のことよろしく頼むワ」
「うす!」
『言質とりました。幸せにしてね千冬くん?』
「も、もちろんすよ!」
絶対…
離してあげませんから。
end…