第13章 お気に入り(松野千冬)
「幸せ」
『千冬くんさっきからそればっかり』
「ねえここじゃ狭いからベッド行きません?」
『いいよ、連れてって』
俺に向かって両手を伸ばす彼女を横抱きにしてそっとベッドに降ろす。隙間なく密着して沈んでいく身体。
『千冬くんの当たってるんだけど?』
「好きな人とキスしてんのに反応しない男います?」
『ふふ、素直で可愛いなあと思っただけだよ』
また可愛いって言った。
この人俺の事ちゃんと男だって分かってんのかな。
「あの」
『なーに?』
「俺返事待ってるこの1週間めっちゃ不安で1回も抜いてないんすよね。」
『…うん?』
「すっげえ溜まってるんすけど」
『あ…や、待って千冬くん』
「待てねえっす…俺の初めて貰ってさん」
不安で不安で仕方なかった。脈ナシじゃないかもってルンルンで帰ったあの日。次の日もその次の日も連絡はこなくて、俺から連絡すんのは返事急かすみたいでなんとなくできなかった。だから抜くとか全く考えてもなかったんだけど…気持ちが通じあった今は正直まじで興奮しすぎて理性どっか行きそうなレベル。
「さんのこと考えて俺が何回シたか分かります?」
『そんなの分からないよ…』
「俺もいちいち数えてないっすけど、やっと本物のさんを抱ける…。」
可愛い可愛いって後輩扱いばっかりしてくるもんだから、こういう時くらい男だって意識してもらわねえと。
『優しくしてね…?』
「上手くできるか分かんねえけど優しくはします。」
はっきりとした意識で彼女に触れるのはこれが初めて。トレーナーの裾から手を滑り込ませて真っ白な肌を撫でる。
「さん少し背中浮かせて欲しい」
『うん』
俺の首に腕を巻き付けて引き寄せるように背中を浮かす彼女。ベッドと背の間に手を入れて下着のホックを外すと締めつけを失った膨らみがふるりと揺れた。
『お、1発で外せたね。もしかして経験者?』
クスクスと小さく笑う彼女の余裕を崩すにはどうしたらいい。俺ばっかりバクバクしてて、ホックだって触ったの初めてなのに…でも外せてよかった。