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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)


side you

鉄朗と2人並んで歩く帰り道。

いつもは分かれ道で私だけ別方向だから。研磨くんと鉄朗と分かれて私は毎日この道を1人で歩く。

だからこそ不思議な気持ちになる。

1人で歩くはずのこの道を鉄朗と歩いてることが。

付き合っていた時は毎日のようにお家まで送ってくれていたけど、高校生にあがってからはただの1度もなかったから。

なのに

「…がいいなら俺は毎日送りますよ?」

なんて言うから。

『毎日?鉄朗のファンの人達に怒られちゃうよ〜笑』

「いやいやそんなのどうでもいいでしょ。俺が送りたいんだから。」

『もう何言ってるの〜』

ほんとに…何言ってるんだろう。鉄朗の気持ちがわからない。もう貴方のバレーを邪魔しないって決めたのに…そんなこと言われたら勘違いしちゃうよ。

「あのさ、って今好きなやつとかいたりすんの?」

『好きな人…い、ないかな…?』

ドキリと心臓が跳ねた。鉄朗のことを好きなのかは自分でもよく分からない。でも特別な人に変わりはなくて、好きだと言ってしまえば何かが溢れちゃう気がした。

「そっか。」

『うん。鉄朗は…?』

「俺はいるよ。」

いるんだ…なんて落ち込むのはなんでだろう。

『そうなんだ。』

「誰か聞かないの?」

『え、聞いたら教えてくれるの?』

「になら教えてあげますよ」

優しい眼差しで私の顔を覗き込むように言う鉄朗。そんな特別は…いらないよ。まだ好きかもしれない元彼の好きな人を知りたいなんて私は思えない。

『ちょっと気になるけど…大丈夫。』

「そう?じゃあ分かったら教えてよ」

『うん、そうするね』

きっと私から聞くことはない。知りたくないから。別れを告げたのは私なのに…2人でいると色んなことを思い出しちゃうな。

『送ってくれてありがとうね。』

「いーえ。またカフェ教えてくださいよ」

『もちろんだよ!』

2人で、もしくは3人でカフェに行くくらいは許されるよね。次の約束があるってこんなに嬉しい事なんだ。

「んじゃまた」

『うん、気をつけて帰ってね』

「ありがと」

付き合ってた頃みたいにキスをしてバイバイなんてことはないけど…せめてこの距離にいたいと我儘な私をどうか許してほしい。
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