第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side赤葦
このむさ苦しい男だらけの中唯一澄んだ場所があるのだとすればそれはきっとマネージャー陣のいるブースだけだろう。食べると言うよりはお喋りに夢中らしい。
その中にはさんもいて、この1週間俺は気づけば彼女を目で追っていた。さすがの俺も、あぁ好きなんだなって自覚するくらいには彼女の事を考える時間も増えた。
声をかけに行くと1人だけ肉の盛られた皿を持っていた。黒尾さんかららしいけど、女子に肉のみって有り得ないでしょう。
野菜を取りに梟谷生が集まる場所へ戻ると木兎さんが馬鹿みたいに焼きマシュマロを作っていた。
「ちょっと木兎さんこんなに作って誰が食べるんですか」
「俺が全部食うの!!」
「お肉はもういいんですか?」
「それも食う!」
「お肉食べてる間にマシュマロ固くなりますよ」
「そうなのか!?それは困る!!」
「じゃあいくつか貰っていきますね」
「あ!赤葦い!俺のぉ…っっ」
絶対飽きて食べられなくなるオチなら最初から別の人に分けた方が絶対にいい。それにさんは甘いものが好きだから。直接聞いたわけではないけど、カフェでいつもケーキを食べているみたいだし。
野菜とマシュマロを手に戻ると、俺にも食べようと勧めてくれた。串に刺さったままのソレを俺の口元まで持ってくる彼女。
え、あーんてやつですか?さんから?
「赤葦口開けなよ〜チャンスだぞー」
「は、はい…っ」
中々口を開けない俺を見かねたのか白福さんが若干煽ってくる。チャンス…ならやるしかない。
『おいしー?』
「…っは、い」
『ふふ、木兎くん焼くの上手なんだね』
そう言って自分もマシュマロを頬張る。美味しそうに食べるんだなあ。しかもなんか…
「マシュマロ似合いますねさん」
『どういうこと〜笑』
「どっちもなんか白くてふわふわです」
世界一マシュマロが似合う人かもしれない。ふわふわと優しい笑顔の彼女には真っ白なマシュマロが良く似合う。