第10章 約束 ( 北信介 )
「その体勢キツくないん?」
『分かってるならどいてや…』
「離れたくない」
『も…キツいんやって…』
俺の肩に手を置いてかろうじて耐えていたさんの身体から力が抜けてペタリと俺の上に座る。
『…っんぁ』
「…っは、」
制服の中で主張している俺の息子にピンポイントで座ってきよって、狙っとるんちゃうかと思ってまう。
『ご、ごめ…ん!』
「むしろラッキーなんでこのままでええです」
だんだんと濡れていく大きな瞳。
ほんまやっばいわ…。
『み…宮くんの当たっとるから…っ』
「さんが座ってきたんやろ?
えっちやなあ先輩。」
『やだ…っやめて、』
細い腰を引き寄せてゆらゆらと揺らせば濡れた瞳から涙がこぼれ落ちそうになっていく。
「泣くほどええの?」
『ちが…うっ』
「冗談やから怒らんといて?
怒ってるさんも好きやけど」
『冗談ならもう離してや…っ?』
「離さへんってなんべん言うたら分かるん?」
抱き寄せて首筋に唇を添わせる。
『ん、…あっ』
「声かわええ…」
正直心臓はバクバクやし、好きすぎて頭おかしくなりそうやし、なんなら夢ちゃうかって思う。
「ねえさん」
『な、なに…?』
「好き。めっちゃ好きやで。」
『何回も聞いたって…分かっとる。』
「うん、それでも言わせてほしいです。」
分かっとるよって頬を染める先輩が可愛くて、何度でも想いを伝えたくなる。少しでもさんが俺を見てくれるようになったんが嬉しすぎて諦めんでよかったって心から思う。
たとえ北さんの彼女でも2番目でもええと思える。
俺はさんを好きで幸せやから。
「好き。大好き。」
『もう宮くん…っン!』
「唇柔らかいし可愛ええ」
『ん…っ何回するん…っ?』
「今まで我慢しとった分」
『この前もしたやろ…?』
「あんなんじゃ足りひんですよ」
傍から見たらなんて不幸で不毛な恋なんやろか。彼氏がいる人をこんなに愛して求めて…それでもどうしようも無く好きやからこれでええと思えてしまう。俺はなんて幸せなんやろか。