第10章 約束 ( 北信介 )
あの日からふとした時に思い出してしまう。思い出す度に身体が熱くなる。まともに信介くんの顔も見れない。
「さんおはよーございます」
『…治くん?』
学校への道を歩く私に声を掛けてくれたのは治くん。銀髪のよう似合う男の子。
「うん治。ツムちゃいますよ。」
『分かっとるよ。
久々声掛けてくれたから驚いとるだけ。』
廊下ですれ違ったら声を掛けてくれるし、挨拶もしてくれる。やけど、登校中に並んで歩くんは初めてや。
「北さんと付き合っとるのほんまですか?」
『…信介くんが言うてた?』
「いや、ツムがめっちゃ泣いとったから。
俺の方が北さんよりええ男やろーって。」
『あはは…うん、ほんまやで。』
「そっか。俺はどっちでもええんやけど、ツムが毎日うっさいからたまには構ってあげてください。」
信介くんより宮くんの方がええ男か…。人によってはそう思うかもやけど…私は信介くんが好きやからなぁ。
「あー!!サム!俺のこと置いていきよったと思ったらさんとおるやん!ふざけんなバカサム!!」
「はあ?ツムが起きるん遅いねんアホ」
「さんはなあ!北さんと付き合うとるからサムのことなんか相手にせえへんで!」
「それブーメランやでツム。」
「あっぁあああ!しまったぁああ!!」
『ふっ…あははっ宮くんほんまおもろいなあ』
こんな賑やかな朝あんまないで。
「まあ今はおもろい枠でもええですけど…」
『治くんネクタイゆるゆるやで』
ただ結んだだけの歪なネクタイが気になってしまう
「俺結ぶん下手くそなんですよね」
『ちょっと止まって』
歩き続ける治くんを立ち止まらせてクイッとネクタイを直す。
『よし、ええよ』
「すんません、ありがとうございます」
『ううん、私が気になっただけやから』
「ええなーサム!
さん俺は?俺のは??」
ぐーっとタイを引っ張って無理やり形を崩した宮くんが私を覗き込む。
『…さっきまで綺麗やったで』
「俺のもやってほしいやん…」
『分かった分かった、ほら止まって?』
すぐに立ち止まって屈んでくれる宮くん。