第10章 約束 ( 北信介 )
「なあサム」
「なんやツム」
「ひとつ上の学年にクール美女おるんやん」
「あの黒髪ロングで高嶺の花みたいな人やろ?」
「せや、その人!」
「それがなんやねん」
「さっきな、ちょっと話せてん!
ごっつえぇ匂いしたわ!!」
「そんなことかいな。ちょっと話せたとか見かけたくらいで毎回報告してきよってなんやねんな。」
「俺ずっと好き言うてるやん!タイプやねんて!」
「名前も知らんとよく好きって言えるな」
「ふっふっふ、名前もちゃーんと聞いてきた!
さっき話した時に教えて貰ってん!」
「興味ないわアホ」
「さんって言うねんて!
名前までクールやんな!好きやわあ⋯」
「興味ない言うてんねんうっさいな。」
バレーと飯のことしか興味のないサム。俺はもちろんバレーが1番やけど高校に入ってから、ひとつ上の学年にドンピシャタイプの先輩がおって、どうにか接点が作れないかと試行錯誤してん。まあ特に何もないまま2年になってしもうたんやけども。
ほんまになーんも知らんねん。
顔とさっき知った名前くらいしか。
クールビューティって言葉がよう似合う人で、大勢とつるんでるイメージはあんまあらへん。かといって友達がおらん訳でもなくて、狭く深くタイプなんやろかと勝手に思っとる。
他学年フロアに現れることなんて滅多にあらへんし、バレー部のマネでもない。部活は確かテニス部。放課後俺らは体育館で先輩はテニスコート。ほぼ会わんってのが現状。1年の時に体育祭で見かけて見事に一目惚れ。
話しかけるネタも接点もないまま進級。
たまにすれ違ったりしたら
それだけでその日1日俺は最強になれる。
そして今日は初!話せた記念日やねん!
なのにサム冷たすぎやろ!凍るわ!!
話せたゆうても一瞬やしほんまにたまたまなんやけど、そんなんでも十分すぎるほど嬉しかった。