第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
適当にどっかで待っててくれと伝えたはずのはちょこちょこと俺のあとをついて校舎の柱に隠れている。バレバレだってあとで教えてあげよう。
興味もない1度寝ただけの女にあーだこーだ言われたい放題で話なんて全く頭に入ってこない。とりあえず好きにさせたんだからヤリ捨てすんなって話らしい。
付き合うなんて言った覚えはないし
彼女でもない女を何回も抱かない。
こいつらが抱いてくれと頼むから1度だけだと言って抱いた。ただそれだけ。俺の性欲処理にもなるしあっちもお望み通りならウィンウィンだろ。後腐れさえなければの話だけど。
「あんたなんて刺されちゃえばいい!」
声を荒らげた女の怒りと悲しみが混ざったような表情が俺を見る。心底どうでもいい。まいだっけ、まいかだっけ。名前すら曖昧で思い出そうとも思わない。ここにいる女の名前全員わかるかって聞かれたら分かりませんって答える。
「はいはい。
もう話終わった?行っていい?」
待たせてんだよ。
ぷりぷり機嫌損ねっから早くしてくれ。
ケーキ何個奢らされるか分かんねえ。
「ほんと最低…っ」
呆れたように去っていった女たち。
追いかけるつもりもない。
ただ、大事に抱いたとか求めるように抱いたとか…なんか引っかかる。誰をどう抱いたかなんて覚えてない。ただヤれればいい。それだけなのに何かが引っかかるこの感覚はなんだろうか。
まあ考えるだけ無駄か。
「」
『…っふぇ?』
「ずっと聞いてたろ?バレバレ
待たせて悪ぃな、ケーキ食い行こーぜ」
まさかバレてるとは思っていなかったらしく、名前を呼ぶとビクッと肩が揺れた。
黙りこくって何も言わない。
なんだよそんなに驚いたか…っておい。
「なんで泣いてんの?」
『…っこれは。何でもなくて…』
「俺が責められてたから?」
『…。』
「なんだよ図星?
お前が泣いてどーすんだよ」
『だってカズくんばっかり悪者みたいに言うから…私悔しくて…っ。カズくん本当は優しくて強くてかっこいいのに…。』
「はいはい、泣きやめよ。な?
ケーキ食いいくんだろ?」
『うん。行く。』
「うし、行くぞ」