第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
「…てか呼び出した本人なんでいねぇの」
私もそれは思ってた。
「羽宮くんに会うと泣いちゃうからだってさ」
「あぁそう。」
なんと…あのあとたくさん泣いたのかな。
なんだか悪いことをしてしまった気になる。悪くないとはいえ今日カズくんとでかけるのは私だ。
「ねえこっちがどんだけ苦しいか分かってる?好きにさせるだけさせといて1回シたらポイって最低だよ!?」
「頼んでねえよ。
勝手に好きになってんのそっちだろ。」
「本当最低…クズ!」
「ふざけんなクソ野郎!」
ツキンと胸が痛む。
どうしてカズくんがそこまで言われなきゃいけないんだろう。確かに最低かもしれないけど、カズくんはできない約束をしないから。だから彼女たちが頼むなら一度だけと決めて抱いたんだと思う。
勝手に好きになって怒って…
カズくんばかり責められてこんなの酷い。
ポロポロと涙が溢れてくる。
パシンと乾いた音が響いた。
それも1度じゃなく2度3度…。
「…」
「私達の方が何倍も痛かったんだから!
こんなんで済むとか思わないで!」
見ると、頬を抑えているカズくんが見える。
彼はそんなに悪いことをしたのだろうか。
抱いてくれと頼まれたから1度だけなら、と言って抱いただけ。そしたらカズくんを好きになってしまった子たちが捨てられたと言って怒っているんだ。
そんなのってあんまりでしょ。
好きという感情がないのに抱いてしまったカズくんも悪いけど…けど。私はカズくんの幼馴染だから…どうしても彼を庇いたくなってしまう。
「そのうち彼女寝盗られた男子に刺されるんじゃない?」
「かもな」
「あんたなんて刺されちゃえばいい!」
「はいはい。
もう話終わった?行っていい?」
「ほんと最低…っ」
もう何を言っても聞く耳を持たないカズくんに嫌気がさしたのか、女の子たちはそのまま帰ってしまった。ただ1人その場に残されたカズくんは、少し傷ついたようななんとも言えない表情をしていた。
「」
『…っふぇ?』
「ずっと聞いてたろ?バレバレ
待たせて悪ぃな、ケーキ食い行こーぜ」
まさかバレてたなんて…恥ずかしい。