第4章 好きです先生②(松野千冬)
「いい加減信じてよ…。
俺はちゃん以外の女の子に
触れたいとも思わねえのに…っ」
『ごめ…っ!
疑ってるんじゃなくて…ごめんね。』
「なんで謝んの?俺の気持ちに応えらんねえから?
だとしても俺は諦めねえって言った。
そんな程度の好きじゃねえんだよ。」
『千冬くん…』
「好き。好き…好き大好き…。
ちゃんの全部が欲しい。
俺がワカくんのこと忘れさせてあげる」
『千冬くん…ごめん。ずるい大人でごめん。
私まだワカくんのこと忘れらんない…っひぐっ
でも…んぐっ…ん…ひっく』
「ちゃん?泣いて…る?ごめん!」
後ろ向きに抱きしめていた彼女をくるっと回転させ、俺の上に座らせて正面から抱きしめる。凛としていて、だけど可愛げがあって…しっかりもののちゃんが涙を見せることはあまりない。泣き始めてしまった彼女の背中を擦りながら頭を優しく撫でて続く言葉を待つ。
『…うっぐ…っ。
でも…っ、千冬くんの気持ちがすごく…っうれ…しいから…。絶対にだめ…っなのに。拒めないの…っ。私は千冬くんの先生なのに…なのに千冬くんの気持ちを拒めなくて…っ苦しい…っ。』
「うん。ありがとう。
拒まないでくれてありかとう。
俺はちゃんになら傷つけられてもいいから。ほんとだよ。だから1回俺の事利用してみようよ。ワカくんのこと忘れさせてやるから。俺のことそばに置いてよ…ちゃん。」
苦し紛れに紡がれた言葉が俺を拒めないと言った。同情なのか俺を失いたくないのかは分かんない。後者なら嬉しいけど。そばにいられるならどっちでもいい。例え傷つくとしても構わない。ちゃんとの最短の距離にいたいから。
『わたし…っ。今すぐに千冬くんのことを選べない…っ。もしかしたらワカくんを選ぶかもしれない…っ。それでも今は千冬くんに…甘えて…もいいの…っ?』
「うん。いいよ。
たとえ俺の望まない答えだったとしてもちゃんが幸せならいい。でも…贅沢を…わがままを言うなら俺を選んで…ちゃん。」
俺を選んで…贅沢でわがままな本音。
この先ちゃん以外を好きになることは
俺にはきっとないだろうから。
結ばれるならちゃんじゃなきゃ嫌だ。