C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第3章 黒の暴牛団
目が覚めると、寝る前と変わらない風景に肩を落とした。夢ではなくこれは現実だ、と思い知らされる。
現実世界で使っていたお金は使えるわけがなく、宿泊費をどうするか考える。きのうは突然トリップして頭が真っ白になって、お金が使えるかどうかもわからないままバーに入った。そこで会った知らない男とやってしまった。何やってるんだろう、と自己嫌悪になる。
ふと部屋のテーブルを見ると、この世界のお金のようなものが置いてあった。きのうの男が置いていったに違いない、と思った。彼は顔立ちが綺麗な反面、見えない心の奥底に深い闇を抱えているように感じた。性格はひねくれていたが、こうして泊まる場所を用意してくれてお金のことも気遣ってくれている。
会ってすぐその日にやってしまったことはどうかしていたが、本当に助かった。彼がいなければあのまま誰にも信じてもらえず、暗闇の中で野垂れ死ぬところだった。
彼がこの世界は魔法が全て、と言っていた。そして、魔力が全て、と────……彼の空間に入ると一瞬で場所が移動する。彼は一体、何者なんだろうか。
とにかく、今はこのお金があるうちに働ける場所と住む場所を探さなければならない。窓の外を見ると、夜の暗闇は消え去り青空が広がっていた。お昼くらいだろうか。町へ出てみよう、と思った。
町へ出ると、そこにはきのうと違う風景が広がっていた。きのう目の前に聳え立っていた王宮は、この町から見ると上に位置している。
町には露店が並び、賑やかで雰囲気も高貴すぎない。人々の服装は至って普通の服装である。すれ違う人々がわたしをじろじろと見ている。彼がくれた服は貴族が着るようなドレスで、この町では浮いていた。
この様子から推測すると、きのうトリップした町は王族や貴族が住み、この町は平民が住んでいるのだろうか。しばらく歩いて露店の店主に尋ねた。
「あの、すみません……ここは何という町ですか?」
「お嬢ちゃん、どこかの貴族かい?ここは城下町キッカだよ。」
身分なんて関係ない。わたしがトリップしてきたことを話しても、信じてくれる人なんてきっと、いない。このままずっと1人で彷徨うことになったら、と絶望感が押し寄せてくる。どこへ行こう、と下を向きながら行くあてもなくふらふらと歩いた。
「そこのお嬢さん、かわうぃ〜ね!俺とお茶しない?」