C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第31章 番外編 〜月〜【R18】
とあるビルの屋上。
中へと入ると館内は少しひんやりと感じた。照明が落とされていてとても薄暗く、時折、水音がどこからともなく聞こえてくるだけの静かな空間だった。
ここはわたしが記憶を取り戻した場所。ランギルスとの思い出の水族館だった。月と3人で来るのは初めてだ。
「月、クラゲさん見たい」
「クラゲのトンネルがあるから行こう」
わたしたちが向かったのは“海月空間”というエリア。月の小さな手を引き、青く神秘的な空間に入る。
「わあぁ〜クラゲさんいっぱい」
月は大きな瞳を輝かせて見渡している。
「クラゲは海の月っていう意味なんだよ〜夜空に輝く月のように、海で輝く月みたいな存在がクラゲなの」
月は嬉しそうに微笑んでわたしの手を引っ張って、無邪気にトンネルを抜けていく。月といっしょにランギルスとの思い出の場所に来れてよかった。
────数ヶ月後
季節は初夏を迎える頃。わたしたちが住むタワーマンションの窓からは、いかにも初夏らしく澄みわたる空が眩しかった。
「ミライ、今日も食欲ないのか?」
「ママ……大丈夫?」
「うん!ごめんね?心配かけて……季節の変わり目だからかな?夏風邪かも」
胃腸炎のような症状にここ1週間は悩まされていた。今日もご飯が半分くらいしか食べられず、ランギルスと月にも心配をかけてしまっている。
「病院行ったのか?」
ランギルスに聞かれる。
「行ってないよ。夏風邪が長引いてるだけで……そんなに心配いらないかなって。」
「本当に夏風邪なのか?」
「……え?」
ランギルスは神妙な面持ちでわたしに聞いてきた。月も心配そうにこちらを見ている。夏風邪じゃないなら何?
「とにかく明日いっしょに病院に行く。内科じゃなくて、産婦人科」
月が産まれてからは、しばらく避妊していた。ここ最近、避妊しなかったこともあったし心当たりはある。そういえば月のものも来ていない。
「えっとそれは……つまり……」
「月がお姉ちゃんになるってことだ」
ランギルスがそう言うと、月は瞳ををぱちぱちと輝かせた。
「えっ!本当に?わーい!!」
月もランギルスも、嬉しそうに微笑んでいた。
────次の日
わたしはお腹に新しい命を授かっていることがわかった。