C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
お互いの会社の話しやどこに住んでいるのか、紅茶を飲みながらそんな話しをしていた。ミライに歳を聞くと、30だと答えた。僕よりも2つ年上だ。だが、ミライは昔も今も童顔だからか、年齢よりも若く見える。
「28歳でLuneの社長なんてすごいですね!わたしとは住む世界が違うというか……わたしなんかとカフェに来て、大丈夫ですか?」
やはりミライは他の女と違って謙虚だ。僕に全く媚を売ってこない。そればかりか僕に一線を引いている気がする。彼女の中に弱くてかっこわるい僕はいない。僕も見せていないからだ。社長である上辺だけの僕しか彼女の目にはうつっていないだろう。
「あぁ、心配しなくていいよ。僕が君と来たくて来てるだけだからね」
そう言うと、ミライは少し顔を赤らめた。そんなミライを見て、つい頰が緩んだ。僕は一番聞きたいことを聞いた。
「彼氏は?」
僕の問いにミライはぽかんとした顔になる。ミライが何と答えるか不安しかなく、心臓がバクバクと音を立てている。
「へ……?いません……忙しくて長続きしなくて。」
ミライの答えに、ホッと胸を撫でおろす。だが、付き合っていた男はいるってことか。
「そうか、よかった」
「……え?よかった?」
「あぁ」
「もう冗談やめてくださいよ、ヴォード社長に彼女がいないわけないですし」
「僕はいないよ」
「……」
「いたら、君とふたりで会わない」
ミライは僕に女がいると思っているようだ。社長であり、外車に乗っていて、ブランドもののスーツや時計を身につけている、そんな外見や肩書きが僕らに壁をつくっていた。
外へ出ると、空はすっかり闇に包まれていた。銀座の大通りはきらびやかに輝いている。コインパーキングまでの道は少し暗い。僕らは月明かりの下をゆっくりと歩いた。ミライの記憶がもしも戻らないとしても、僕は君にもう一度、伝えたい。僕の想いを。
「僕も君と同じ、だよ、好きになった人を好きになる。社長だから、とか関係ないよ。だから、また君と会いたい」
「はい……もっと、ヴォード社長のこと教えてくれますか?」
ミライの笑顔が月明かりに照らされて、この世界の誰よりも美しい、と思った。