C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第24章 守りたい人
あれから毎日のように、ランギルスは大丈夫だろうか、と思いながら、暗闇に浮かぶ月を見上げていた。徐々に月は満ちていった。わたしが泣こうが笑おうがお構いなしに、来る日も来る日も、暗闇を照らしている。その輝きは美しくて、悲しい。そして、今日は満月────……
今日は雲ひとつない青い、青い空だった。バネッサといつも通りフィンラルのお見舞いを終え、共有スペースで団員のみんなと過ごしていた。だが、ヤミ団長がいない。フィンラルがいないというのに、どこかへ行ったのだろうか。またマグナといっしょに賭けにでも行ったのだろうか。窓から外を見ると、段々と西の空がオレンジ色になり始めている。辺りが少しだけ暗くなり東の空から満月が昇り始めた。
────しばらくすると、アジトの扉が勢いよく開き、大荷物を持ったヤミ団長が現れた。
「はい、注目……今日の夜にミライが現実世界に帰りま〜す、つーことで送別会だ」
ヤミ団長が団員のみんなにそう言うと、大荷物を下ろした。中にはクローバー王国のお酒であるプレミアムクローバーやお肉やらが入っている。団員のみんなで外に出て、肉パーティの準備を始める。
「あ、あの……こんな盛大に……送り出してもらって……あ、ありがとうございます……」
ヤミ団長にそうお礼を言った。
「あいつ、本当に迎えにくんのか?来なかったら笑えるな、ハッハッハ!」
ヤミ団長はそう言って、冗談混じりに笑い飛ばした。
「「かんぱ〜い!!」」
この世界での、最後の晩餐。二度と来ることのできない世界だとしても、思い出すことのできない消えてしまう記憶だとしても、今を生きている。火の熱さが、風の冷たさが、きんと冷えたビールの喉越しが、夢じゃないんだ、と感じる。みんなの声が、みんなの優しさが、わたしの体中に染み渡る。夢を見ているときの感覚とは違う、人の温かさを感じる。
「みんな……ありがとう、この世界に来れてよかった……みんなに出会えてよかった……」
「「ミライ、ありがとう」」
ぽろぽろと涙が溢れていく。暴牛のローブを脱ぎ、ヤミ団長に返そうと手を伸ばした。
「それは記念に持ってけよ」
ヤミ団長はそう言うと、わたしの手を押し返した。
太陽はすっかり沈み、空は藍色に染まっている。月の光がとても明るく感じた。