C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第21章 真実の愛※
火を消してからベットに入った。ランギルスはわたしの方を向いていた。ふわっと、優しくわたしを包み込んでくれる。腕の中で規則正しい心音がランギルスの匂いが体温が、心地よかった。眠かったが、寝て起きたら、もう二度と、この温かさを感じることができなくなる、そんな気がした。
「ランギルス……?あの、さっきラクエでね、言い忘れたんだけど……真実の愛で繋がる道のことなんだけど……」
「あぁ……、うん、」
ランギルスは疲れていて、眠いのか、それともわたしがランギルスの腕の中で声が聞こえづらいのか、小さな声で返事をした。
「あの道で異世界に行って、1分もしたら、この世界には二度と戻ってこれないんだって……こないだ、魔が弱まったのはそのせいだと思うんだ……それと、この世界にいた記憶は抹消されるって」
わたしがそう言い終えた途端、わたしを包むランギルスの腕の力が強まった気がした。ぎゅっと。
「……そう、か」
「ランギルスとの記憶がなくなるなら、わたし、帰りたくない、な……ランギルスと異世界に逃げたって、ランギルスはこの世界を捨てきれないでしょう?フィンラルを置いて、なんて」
ランギルスはフィンラルのことが本当は好きなんだって気づいていた。本当は優しくしたいし、仲良くしたい、そう思っていても言葉にできない。劣等感や憎悪の感情が邪魔をしていた。でも、フィンラルと仲直りができないまま、異世界に逃げることなんて、きっとできない、そう思った。ヴォード家のことも魔法騎士団のこともこの国の平和も全て捨てて、わたしと逃げる道なんてランギルスは絶対に選ばない。だから、わたしがこの国に残ればいい、そう思った。それなら、ランギルスのそばにずっと、ずっと、いられる……?ふと、疑問に思った。
「別に、兄さんのことなんて考えてないよ、僕は現実から逃げないつもりだからね……僕はもう君がいない世界なんて、考えたくもないんだ……だけど、僕は……君を守るために、君をこの掌で、この魔法で救いたい、とも思うんだ」
ランギルスの切なげな声がこの真っ暗な部屋に響いた。お互いに変わらないこと、それはお互いを想う気持ちだった。世界は変わっていく。変わっていく世界で変わらないこと、ひとつ────……
ランギルスの腕の中で今はただ、この体温を感じていたかった。