C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第20章 変わらないこと
夕陽が海に飲み込まれていく。藍色になりかけた空で、弓のような形をしている月が西の空に輝いて見える。弓張月と呼ばれる上弦の月だ。上弦の月から満月まではおよそ7日間である。
2人で黙って藍色から暗闇へと変わりつつある夜空を見上げていた。波の音が耳に響く。
「……ミライ、君は現実世界に帰りたいのかい?」
「……え?現実世界に帰りたいかと聞かれたら……帰りたくない……ランギルスと出会ってこうして想いが通じ合って、このまま2人でずっと……」
「この世界で、僕らは……幸せに……なれるのか……?」
大きな波が砂浜に辿り着いた。ざざぁっ、と。それと同時に突然潮風がひゅうっと吹いて、わたしの髪がなびいて目にかかり視界が悪くなる。さっと手で髪をかき分けランギルスを見ると、遠くの水平線を見つめ悲しい表情をしていた。
「……わからない。でも……好き、なの……大好き……こんなに好きで仕方なくて……」
涙が頰を伝っていく。なぜだろう。やっとランギルスと想いが通じ合ったのに、こんなに悲しい気持ちになるのは────……
ランギルスがわたしの頰に手を伸ばし、その指でわたしの涙を拭った。悲しい表情とは裏腹に温かい体温が頬から伝わる。ランギルスの掌は温かかった。
「あぁ、僕もだよ。ミライ、僕がどんな選択をしても……僕は君への想いは変わらない。信じてくれるかい……?」
「……うん」
わたしがそう返事をすると、ランギルスはわたしの顎をくいっと掴みそっと唇に触れた。触れるだけの優しいキスだった。
「ミライ、これ……君に」
ランギルスに小さな正方形の箱を差し出され、受け取った。
「……開けていいの?」
「あぁ」
箱を開けると、中には四つ葉のクローバーのネックレスが入っていた。昼間に行った城下町のアクセサリーのお店で見たネックレスだった。
「これ……さっきのお店の……ありがとう、うれしい……うれしくてどうしよう……グスッ」
「泣いてばかりだね……全く君は……面倒だよ……ほらっ貸して」
ランギルスはネックレスを手に取ると、わたしの後ろに回ってネックレスをつけてくれた。そして、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
「僕の想いをかたちにしたんだ……仕方なく、ね」
ランギルスはわたしの首に顔を埋めた。