C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第19章 掌─ランギルスside─※
僕の冷たい掌を誰かが優しく撫でてくれている気がする。まるで温めてくれるかのように。
この感覚は確かに僕の記憶にある。温かくて安心するんだ。
僕のそばにいてくれる君は……白く霞んで見えないんだ。
─────────────────────
僕の兄さんは攻撃ができない軟弱な魔法しか使えない。なのに、兄さんはみんなから好かれていた。僕が兄さんより劣っているっていうのか……僕の方が何でもできて魔力も強いというのに……兄さんは兄さん自身を認めてもらえているんだ。
僕は本当の自分を見てもらえることなんてなかったんだ。みんな僕の魔力だけを見ていた。勝ち続けなければ僕を認めてなんてくれないんだ。苦しい逃げたい……僕はきっと魔力や地位がなければ誰からも愛してもらえない。
僕は毎日、兄さんへの劣等感でムシャクシャしていた。誰にも言えないこの気持ちをぶつけるためにいつも適当な女を抱いた。女には困らなかった。僕の魔力の強さや地位縋って寄ってくる。誰もが僕自身に興味なんてないからね……好きって何だ?僕にはわからない。女は僕の満たされない気持ちの吐口として利用するだけだと思っていた。
ヴォード家に来たあの女は父さんと母さんが決めた許嫁だ。叔父が国王だとか言っていたが、ヴォード家に嫁いでただ名声を手に入れたいだけだろ?決められた結婚相手だなんてね……つまんない人生だ。適当に女を抱いても満たされない。
ある日、この世界のことを何も知らない女を抱いた。異世界から来たと言っていた。いつものように適当に鬱憤を晴らすには都合がいいと思った。名前も聞かなかった。
だが、その女は何度も僕に会いにきてくれた。約束もしていないのに……その女は僕のことを知りたいと言った。僕の何を知りたいのか不思議だった。僕の趣味やら好きな食べ物やら好きなお酒やらと肩書きとは関係のないことばかりを聞いてくる。こんな女は初めてだった。その女はミライと名乗った。
ミライに会うと僕は温かい気持ちになった。同時にいつも冷たい掌にも体温が巡り温かくなるのを感じた。そして僕はミライが会いにきてくれるのを待つようになったんだ。任務のときもミライのことを思い出したりして、この僕が……どうかしているね……
僕はいつの間にか温かい感情を覚えていた────……