第2章 新たな場所。
数時間後、目的地の駅に着いた。
ウトウトとしていたせいで頭がぼんやりとしている。
人の流れが空いて来た頃、私はトボトボと重い足取りで改札を出た。
次の瞬間、
「ともみっ‼︎‼︎」
目が覚めるような大声に肩が跳ねた。
声の主の方へ目を向けるとその人は両手を広げこちらに向かって走ってくる。
母の姉、私にとって叔母にあたる人。
叔母は勢いをそのままに、目の前に来ると思いきり私を抱きしめた。
「もー!心配したのよっ‼︎ともみってば携帯を持ってないし!
はぁ、無事に着いて良かったわ!」
叔母は腕を緩め私の顔を覗き込む。
「遥々よく来たわね!」
ニコッと笑うと私の背中をバシッと叩く。
細められた目元は母とそっくりで、私は思わず視線を外した。
身寄りのなくなった私を真っ先に拾ってくれたのは兵庫に住む叔母だった。
叔母はライターの仕事をしていたが、旦那さんが海外に転勤になったのをきっかけに広い自宅を改装し下宿を営み始めた。
下宿には近くの稲荷崎高校の生徒が入居しており、叔母はフリーライターの仕事をしつつ下宿の管理人もしている。
そして私も今日からその下宿に住まわせてもらうのだ。