第29章 黒尾end
日向さんはポリポリとこめかみのあたりを掻きながら気まずそうに私から視線を逸らした。
日向さーーん‼︎
と心の中で叫んでみる。。
鉄朗は「ソレすげー想像つくわ。」と呆れた様子で苦笑していた。
・・まぁ、確かに積極的に質問してきてくれたのはその2人だったのは間違いない…。
セミナーの最後に質問や相談事がある人には個人的に時間を作って話をするけど、木兎さんはセミナーとは関係のない話を延々と話してくるし、侑君に至ってはちょっとメシでも食いに行こう?とか誘ってくる始末だった…。
けどこの2年間、必死で勉強し直してようやく管理栄養士の資格を取り、ブラックジャッカルのチーム栄養士に就かせてもらえた。
そこで初めてのセミナーで選手達が興味を持って話しを聞いてくれたのは単純に嬉しかった…。
チラリ、と隣に座る鉄朗の顔を伺うと、
黒尾「ま、こんなに健気に頑張ってる姿を見てたら俺の気苦労なんて安いモンですよ。」
と困ったように笑い、優しく髪をかき混ぜられた。
ボサボサになるよー、と照れ隠しで手を払い避けたけど、昔からこうして鉄朗が頭を撫でてきたり、髪を触ってくるのは好きだったりする。