第28章 MSBY
木兎「あれ?おみおみじゃん‼︎何見てんのー?」
日向「臣さん?あっ!これ今日撮ってたやつですか⁇俺も見たいっ‼︎」
大きなテレビの前に座っていた選手らしき人が振り向いた。
癖のある黒い髪、マスクをして気怠そうな雰囲気を醸し出すその人は…
「さ、佐久早選手…」
佐久早「・・誰?」
テレビを通じてしか観た事のない有名選手を前に、思わず声に出してしまったが、私は慌てて姿勢を正した。
「突然お邪魔して申し訳ございません。
私、日向選手の栄養管理をさせて頂いております、原ともみと申します。」
さっとバッグから名刺ケースを出し、佐久早選手の近くまで行くと名刺を差し出した。
佐久早選手は眉を寄せながらも立ち上がり名刺を受け取ってくれると、
佐久早「・・どうも。」
マスク越しのこもった声で返事をしてくれた。
佐久早選手の後ろの大きなテレビでは、練習を撮影したものが流されていた。
セットアップのタイミングやフォームの確認をする為、選手達は映像を欠かさずチェックしているって聞いた事がある。
すでに日向さんと木兎さんはテレビの前を占領し、あーでもないこーでもないと画面を食い入るように観ていた。