第17章 揺らぐ。
壁には額に入った賞状がずらりと並んでいたが、その中に青春を象ったような1枚の写真が貼ってあった。
賞状と並んで貼るぐらいだからきっと大切な思い出なのだろう、と華は思った。
華「・・楽しそうですね。みんな下宿のメンバーですか?」
侑「ん?あぁ、せやで。去年の夏みんなで海で撮ったやつや。」
水着姿で楽しそうに笑う5人が映っている。
実際は色々あった後に撮った写真だが、珍しく5人全員が映っていた為、あやかが人数分現像して配ったものだ。
華「・・同じ高校に入って、やっとこんなに近くにいれるのに…うまくいかないものですね。」
華は下唇を噛み、今にも泣きそうな顔をしていた。
侑「・・・華?」
華「侑先輩の好きな人って原先輩ですよね?」
侑「んぐっ!ゲホッ、ゲホッ‼︎」
華「先輩っ⁈大丈夫ですか?」
華は慌てて側に置いてあったペットボトルの水を差し出した。
侑はそれを受け取り、ゴクゴクと音を立てながら水を飲むとジロリと華に視線を向けた。
侑「急に変な事言うからビックリしたわ。」
華「すいません…。でも当たり、ですよね?」
侑はプイとそっぽを向くが、ほんのりと赤くなった耳が何よりも物語っていた。
そんな侑を見て、華はクス、と笑った。
華「先輩のそんな顔、初めて見ました。
付き合ってる時はいつも"明るくてカッコ良い先輩"って感じでしたから。」
侑「何や、過去形かい。」
少し不貞腐れた表情をする侑に華は笑いながら首を横に振った。
華「今も、この先も私の憧れのカッコ良い先輩ですよ。
・・けど、何だかもう頑張る気、失せました。しかも相手が原先輩じゃあ私に勝ち目ないですし。」
侑「・・・華。」
華は明るく笑って見せた。
華「・・これからはいちファンとして先輩の事、応援してますから。いつかオリンピックに出るぐらい有名になって下さいね。」
侑「ハッ!あったり前や!俺は将来日本を引っ張る選手になるで!」
ベッドの上で胡座をかいていた侑は、手に持っていたペットボトルを勢いよく振り上げた。
ペットボトルの蓋が空いているとは知らずに…。