第17章 揺らぐ。
侑君の甘えたような口調に思わずキュンとしてしまった。
そんな私を見て侑君は力無く笑うと、
侑「・・ウソや。・・嫌、ウソちゃうけど。ともみちゃん困らせとうないし…。
ちゃんと食べて薬飲むから学校、行ってええよ?」
普段より赤い目元が寂しげに見えるのは私の思い過ごしなのかもしれない。
けど…。
「・・困らないよ?こういう時、1人になるの心細いよね。」
そういう気持ちは痛いほどよくわかるから。
余計なお節介と思うかもしれないけど。
私は侑君の隣にそっと腰を掛けた。
ギシッとベッドのしなる音がする。
普通のベッドとは違って2段ベッドは天井が低いせいか、まるで狭い密室に2人でいるような錯覚をしてしまい、ドキドキと心臓が音を立てる。
侑「・・・えらい積極的やな。風邪、うつってまうやん…」
じっと見つめてくる侑君に私は首を傾げる。
「え?お粥、食べさせようとしただけだけど…」
そう言うと、侑君の伸びた手がピタリと止まった。
侑「あー、、そっち?そーか、お粥か…。」
何故か残念そうに手を引っ込める侑君を不思議に思いつつも、小皿に取り分けたお粥を掬いフーフーと息を吹きかける。
「はい、あーん。」
侑君は素直に口を開け、お粥を食べていく。
侑「・・うま。たまには熱出すのも悪ないな。」
「もう、そんな事言って。これが試合の前だったら大変だったよ?早く治さないと。」
分かっとるよー、と言いながら口元に運んだお粥を美味しそうに食べてくれる。
肩が触れる程、至近距離にいる侑君は、身体は大きいのに、表情や仕草はまるで子供のようで何だか可愛く思えてくる。
侑「・・は〜。あったまったわ、ありがとう。」
お粥を完食し、薬を飲み終えた頃には、青白かった顔色も心なしか血色が良くなった気がする。
「じゃあゆっくり休んでね。かよこさんには伝えておくから。」
ベッドから立ち上がろうとした時、ぎゅっと手を握られた。
侑「・・早よ帰って来てな?」
熱のせいか少し潤んだ目で見上げてくる侑君にまたもやキュンとしてしまう。
上目遣いは反則…!
「な、なるべく早く、、帰ります。」
顔に熱が集中するのを感じつつも、横になった侑君に布団を掛ける。
後ろ髪を引かれる思いだったが、部屋から出ると静かにドアを閉めた。