第15章 番外編3
粉まみれの手を止めツムに視線を向けるとキョトンとした顔で俺らの手元を見ている。
侑「・・何やそれ。」
治「パン。これから2時発酵させるんやんな?」
「そう。ほら、とりあえずこれだけ丸めないとまた乾燥して固くなっちゃう。」
治「せやな。パンはスピード勝負やな!
それにしてもフワフワで気持ち良えなぁ。」
ともみちゃんが分割した生地をくるくると丸めていく。
ともみちゃん曰く、パン生地は繊細やから優しく扱わなあかんらしい。
侑「・・・。」
ツムの視線を感じながらも残りの生地を丸め終わった。
治「ともみセンセー出来ました!」
「治君、やっぱり手先が器用!初めてとは思えないぐらい上手‼︎」
ともみちゃんはニコッと笑い、パチパチと手を叩いている。
治「センセーの教え方が上手いんよ?」
侑「・・てか2人共、無自覚でやってるんが逆に凄いわ…。」
意味不明な事を呟きながらツムはテレビの前に戻りゴロンと横になった。
・・変な奴やな。
1時間後。
パンの良い香りが部屋に広がる。
綺麗な焼き色がつき、見た目はバッチリやったけど味はさらにピカイチやった。
治「焼きたてムッチャクチャ上手い‼︎」
侑「ホンマや!無限に食えるわ!」
倫太郎「熱っ!うまっ。」
そして俺らの視線はともみちゃんに集まる。
焼きたてのパンにかぶりつき、ハフハフとしながら頬を上気させ、美味しそうに食べている。
そんな可愛い姿に俺らは顔を見合わせ頬を緩ませた。