第11章 けじめ。
雪が舞う中、私達は人通りの少ない道を肩を並べて歩く。
侑君は私の歩幅に合わせて歩いてくれてその気遣いに頬が緩んだ。
ポツポツと会話をしながら下宿までの道のりを歩く。
お互いあの日の事は切り出さずに…。
チラついていた雪はいつの間にか止み、街灯がポツリポツリと点いていく頃、ようやく下宿が見えてきた。
「侑君、温かい飲み物でも飲んで行って?かよこさんも喜ぶよ。」
足を止めて侑君と向き合う。
けど、侑君は眉を下げ首を横に振った。
侑「ん〜、今日はやめとくわ。かよこさんに酔って絡まれると大変やし。」
きっと前ならきっと喜んで寄って行ったのに…。
私は俯きながら「そっか。」と返事をする。
少しの沈黙の後、
侑「・・・顔の傷、跡残らんで良かったな。」
「・・え?」
顔を上げると侑君と視線が重なった。
ふと思い出すのはあの日の記憶。
侑「あん時…泣かせた事、ずっと謝ろ思ってた。今更やけど、、ホンマごめん…。」
侑君の目が揺れている。
侑「都合の良い事抜かすなって怒るかもやけど、、ともみちゃんとはちゃんと仲直りっちゅーか、前みたいな関係に戻りたいって思ってるんやけど、、、あかんかな?」
「侑君…。」
嬉しかった。
私はまた向き合う事から逃げようとしていたのに、侑君はちゃんと私と向き合ってくれた事が…。
「私の方こそ、ごめんなさい…私、あれから侑君の事避けてた。
けど、本心は前みたいに戻りたいってずっと思ってた…。」
私は素直に自分の気持ちを伝えた。
侑君はホッと肩を撫で下ろし、口から白い息を吐いた。
侑「・・じゃあ仲直りって事でええ?」
私は顔を綻ばせ頷いた。
侑「良かったー‼︎俺、もうともみちゃんが嫌がる事はせーへんって誓うから!」
「・・寝ぼけてても?」
侑「ッ⁉︎ね、寝ぼけてでも!」
フフッと笑う私につられて侑君も笑い出した。
侑「ともみちゃんはやっぱり笑った顔が1番やな。それと、、ありがとう。」
久しぶりに侑君の笑った顔を見て、思わず顔を赤らめてしまった私は、マフラーに顔を埋め笑顔で頷いた。