第10章 BIRTH DAY
弱っていたせいか、クロの声をもう少し聞いていたかった。
それから私達は気づいたら1時間以上話していた。
相変わらずクロは聞き上手で、誰にも話さないと決めていた失恋話まで聞き出されてしまった。
下手くそで纏まりのない話しに、クロは時折相槌を打ちながら話を聞いてくれた。
クロ「稲荷崎の宮侑ねぇ。ハイスペックな野郎かと思ったけど、案外不器用なバレー馬鹿なのかもな。」
「不器用なバレー馬鹿(笑)?」
クロ「そ。俺も似たようなもんだからちょっと気持ちわかるわ。まぁ、そこまで節操なくねーけどな。」
「て事はクロも不器用なバレー馬鹿?」
クロ「俺は器用なバレー馬鹿。」
「フフッ、何それ。」
クロ「でもよー、失恋したって言うけど気持ち伝えたワケじゃないんだろ?それでともみはいいのかよ?」
「・・そうだけど。振られるって分かってるのに告白する勇気なんて私にはないよ…。」
クロ「まぁ…。それはちょっと分かるな。」
「もう良いの。ほら、初恋は実らないって言うし!」
クロ「初恋ねー。て事は研磨の恋も実らないってことか…。」
「え⁇研磨の初恋って何?私、知らないよ?」
クロは何でもな〜いと笑っている。
クロ「・・・あー。ともみの笑った顔見てー。。こんな時すぐ会える距離にいりゃあ抱きしめて甘い言葉でも囁いてやるのに。」
クロの声が優しく耳をくすぐる。
「今弱ってるから、そんな事されたら泣いちゃうよ…。」
クロ「バカ!そんなん言われたら、マジで会いたくなるっつーの!
ったく。。ホントに大丈夫か?」
「うん…。クロに話聞いてもらったら少し元気出て来た、ありがと…。」
クロ「・・つーか、春高で宮侑と会ったら俺が一発殴ってやる。」
「えぇっ⁈やだっ!そんな事しちゃダメだよ!」
クロの物騒なセリフに思わず声を上げてしまった。
クロ「ハハッ、嘘だよ(笑)んな事しねーし。」
もー!と怒ルト電話越しから笑い声が聞こえてきた。
クロ「つーかさ、もう無理すんなよ?何かあったら話ぐらい聞くからいつでも連絡してきなサイ。」
「フフッ、はい。」
クロ「ともみ。」
「ん?」
クロ「誕生日おめでと。」
16歳の誕生日は結局布団の中で過ごしたけど、ずっしりと重かった心と頭はクロに話せた事でスッキリとし軽くなった気がした。