第9章 文化祭
侑君の手が私の後頭部に伸び、強く引き寄せられた瞬間唇が重なった。
「ッ⁈」
驚きのあまり目を見開き固まる私を、侑君は鼻で笑うと唇を僅かに離し囁いた。
侑「イチから教えなわからん?目閉じて口開け」
またすぐに唇が重なり、今度は侑君の舌が唇を割り入るように侵入してきた。
拒もうと身体を離し後ろへ下がったが、そのまま廊下の壁に背中を押し付けられてしまい、逃げ場を無くしてしまう。
角度を変えさらに濃厚なキスに変わり、必死で侑君の胸を押し返そうとするが、腕を掴まれ壁に縫いとめられてしまった。
熱い舌が私の口内を暴れ、厭らしい水音と荒い息遣いが廊下に響く。
「・・・っ」
息苦しさからなのか、悲しさからなのか、、ツーと涙が頬を伝った。
そんな私に気づいた侑君はようやく唇を離すと、長い指で涙を拭った。
侑「・・・泣くほど嫌なんか…。」
至近距離で見る侑君の目は哀しそうに揺れていて、侑君が何を考えているのかさらにわからなくなる。
長い指が顔の傷の上をそっと撫で、痛みに思わず震えると侑君はスッと腕を引っ込めた。
侑「・・・泣いたり怒ったり、出来るやん。」
独り言のように呟くと、くるりと背を向けた。
「あ、侑君っ。」
思わず呼び止めるが、
侑「・・・サムに迎えに来てもらい。それと傷、、跡残らんようちゃんと診てもらうんやで。」
背中越しにそう言い残すと侑君は静かに階段を降りて行った。
「・・・何で。何でそんな優しい声で言うの…。」