第7章 夏の思い出
売店から出て、前を歩く侑君は抱えるようにかき氷を4つも持っている。
「侑君…私1つしか持ってないんで、、もう1個くらい持ちますよ?」
侑「ええねんええねん!両手塞ってたら危ないやろ?ともみちゃん鈍臭いねんから。」
「・・・・鈍臭い…確かに。」
侑「ブッ、冗談やん!そんな間に受けんといて?」
吹き出して笑う侑君。
・・・冗談。
足を止めた私に気づいて侑君が振り返る。
侑「?どないした?」
「・・あ、いえ。私に冗談言うなんて珍しい人だなと思って…。」
侑「ハハッ、何やソレ?ともみちゃんは変な事言うなー」
「・・・変?ですかね。でも侑君は私の事真剣に怒ってくれたり、冗談言ってくれたり、、、何か今までに会った人と違う感じがして…」
心臓がまたドクンと音を立てる。
自分でも何が言いたいのかわからなくなって口籠もってしまう。
侑「そら俺みたいなイケメン、そうそうおらんやろ?あ、氷、溶け始めてるで?早よ戻ろか?」
体温でかき氷が溶け始め、手を濡らしていた。
治君と2人でいた時は温かくて穏やかな気持ちになったけど、侑君といると心臓が跳ねたり、胸を締め付けられるような切ない気持ちになるのは何故だろう…。
同じ顔をしているのに、まるで別人のような2人。
今まで感じた事のない感情に、結局答えを出すことは出来なかった。