第3章 苦手、じゃなくて嫌い
「痕、少し残っちゃいましたね」
骸はヒロの手首を取ると、縛っていたネクタイをほどいた。
そこには行為によって擦れた痕が左右の手首に生々しく残っている。
「責任取りますよ」
「黙れ」
悪びれた様子もなく言う骸を一掃するが、相変わらず笑みを絶やさない骸にヒロはため息を吐いた。
恭弥が帰って来たら……と、考えただけでその後が怖い。
そんなヒロを知ってか知らずか、骸はヒロの右手に軽く口付けながら言った。
「好きです、ヒロ」
「俺は嫌いだ」
「クフフ、そういうところが好きです」
「んっ…」
ニコリと笑って今度は唇に口付けられる。
だがそれはすぐに離れ、骸は扉の方へ足を進めた。
「ではまた、会いに来ます」
「………二度と来るな」
ヒロの言葉に返すこともなく、骸はその場を去っていった。
去り際に見たあの男…シキと同じ赤い瞳が、ヒロの頭に強く残った。