第6章 別れ
天竺との抗争の中で
マイキーの妹・エマが殺された
「リンにはこのことを言うな」と
墓の前でマイキーはオレたちに口止めした
「……マイキー……葬儀に呼ばないだけじゃなく…亡くなったことまで黙ってるなんて……それはあんまりじゃないか?……リンとエマは友達なんだぞ…………それに……どんなに隠したって…いずれは必ずリンも知ることになるだろ…」
我慢できずにオレがそう言うと
マイキーは苦しげな顔で俯いた
「…………分かってる………でも…その時期を1日でも遅らせたいんだ…」
「……」
「……エマが死んだことを知れば……リンの気持ちは必ず揺らぐ。……今みたいな絶対的立場でいる事を考え直して……アイツはオレの側に居ようとするだろう…………でも……中途半端な立ち位置になれば、リンの命はすぐに危険にさらされるんだ…」
「………マイキー…」
「……何も伝えないのは……アイツの身の安全を守るためなんだ………みんなも…分かってくれ…」
実の妹を亡くしたばかりのマイキーの頼みに
オレ達はそれ以上何も言えなかった
「……真一郎の命日の1日前の8月13日………きっとここでリンが泣いてる…………三ツ谷…行ってやってくれるか?」
「……ぇ……だったら…オレよりもマイキーの方が…」
「…オマエに…頼みたいんだ…」
この時
マイキーが何を考えていたのかは分からない
ただ
アイツは真剣な瞳で
オレを真っ直ぐに見つめていた
「…………分かったよマイキー…」
戸惑いながらそう答えると
天下を取ったはずの " 無敵のマイキー " は
とても寂しそうに笑った
「……ありがとな…三ツ谷…」
こんな話をしてから間もなく
マイキーは元東卍の仲間たちを遠ざけるような行動を取り始めた
チーム内での暴力沙汰はご法度だと言っていた元総長のあまりの豹変ぶりに戸惑いながらも
力ではマイキーに敵うはずもなかったオレ達は
どうしたらいいのか分からず
次第に距離を置いて見守ることしか出来なくなっていった
そして
8月13日
マイキーに頼まれた通りに墓地へ行くと
佐野家の墓の前には
泣いているリンの姿があった