第12章 本編 第21章 三社鼎立
福沢は携帯電話を片手に道を歩いていた
そして慣れた手付きで操作すると、耳に当てる
無機質の音が幾度か聞こえた後に目的の者が応答した
「進捗は如何だ」
福沢が尋ねると受話器越しに応答する国木田の声が鼓膜を揺らす
「ご指示の通り、事務員は県外に退避させました、しかし、その……」
「何だ、」
歯切れの悪い国木田を促す様に福沢は尋ねた
「……徳冨の姿が見当たらず……如何やら、退避もしていない様で……申し訳ございません」
白状する様に告げた国木田の言葉を受けた福沢は視線だけを少々、後方へと向けた
「……想定内だ、構わぬ」
「想定内……ですか、」
不思議そうに尋ねる国木田に福沢は頷く
「嗚呼……徳冨の事は私に任せよ、善いな」
「……判りました、」
国木田は福沢の指示に力強く頷くと、次の指示を仰いだ
福沢はそれに答える様にして、徐に口を開いた
「……調査員は全員、社屋を発ち旧晩香堂に参集せよ」
「晩香堂? ……会社設立前に社長が拠点にしていたと云う?」
「あの講堂は極限られた人間しか知らぬ、拠点を秘匿せねば数で勝る敵に圧し潰される」
福沢の重々しい言葉に国木田は彼の覚悟を悟った
時を同じく、受話器越しの福沢は後方へと視線を向けた
「御訪客の様だ、2人――否、3人か」