第12章 本編 第21章 三社鼎立
福沢と徳冨が出て行った扉が静かに閉まってゆくのを見届けた与謝野が腕を組んで小さく呟いた
「ありゃ、相当鶏冠に来てるね」
息を吐く与謝野の意図が判らない中島は小さく首を捻る
その間に何かを探しているのか、辺りを見回す国木田に与謝野が声を掛ける
「如何したんだい、国木田」
「いえ……徳冨の姿が見当たらないなと思いまして……」
先刻まで室内の一角で身を縮こませて震えていた徳冨の姿が忽然と消えていたのだ
「避難したのではないですか? ポートマフィアと組合からの襲撃を受けて、あんな酷い目に遭っては流石の徳冨さんも……」
中島が恐る恐る口を挟んだが、それは直ぐ、与謝野によって否定された
「妾は徳冨が素直に避難したとは思えないけどねぇ」
肩を竦めながら言葉を発する与謝野に国木田も徳冨の日頃の態度、行いを鑑みてか素直に中島の言葉に頷けずに居た
寧ろ、与謝野の考えに同意せざるを得ない
そのため、先刻まで沈黙を貫いていた国木田は苛立った様に頭を掻き毟ると共に叫んだ
「……あの、怒阿保ぉがっ!」
その声は建物を震わせるほど、よく響き渡った
「彼奴は懲りもせず、また何処へ消えたっ!?」
荒く靴音を立てながら建物中を隈なく探す国木田に中島は苦笑を浮かべ、与謝野は再び小さく息を吐いた