第8章 本編 第15章 いつか海の見える部屋で
織田、徳冨が出て行った部屋には1人、太宰が残された
先刻まで銃等が置かれていた机には何も残っていなかった
太宰は誰も、そして、何もなくなった部屋で小さく呟いた
「借りなんて忘れてしまえば善い、相手だって何を貸したか何て覚えちゃいないさ……それに、借りを作ったのは、君ではなく蘆花ちゃんの方だろうに」
少々俯かせていた顔を上げた太宰は小さく笑みを浮かべる
「すっかり蘆花ちゃんの保護者だね……織田作は、」
太宰は織田と徳冨が去って行った扉を静かに見やったのだった