第2章 USJ襲撃事件
「デクくん?!かっちゃんっ??!」
他所様の教室の扉をアザミはノックもせず勢いよく開け放つ。今の彼女にそんな配慮ができる余裕などは微塵もなかった。
1年A組の生徒達はヒーローコスチュームから着替え終え、帰り支度をしているところだった。
「あ"?アザミ、テメェ…」
「あ!アザミさん」「姐さん!」と切島や上鳴に名を呼ばれるもアザミの耳には届かず、ツカツカツカと爆豪に詰め寄った。
「大丈夫?!!怪我してない?!」
「、オイ」
「どっか痛いとこは…ッ?!」
「アザミ、」
「ほんとに、ほんとにどこも…ッ!!」
(私はバカだ…っ!!)
ヒーローは途方も無い悪意と戦っている。
そんなこと知ってる。
ううん、知ってるつもりだった。
大切な人がいずれヒーローになって、悪意と戦うということは―――。
やっぱり何も分かってなかったし、見えていなかった。
ヒーローが戦っているものは、悪。
悪の世界そのもので、闇が深ければ深いほどその光は輝く。身を挺して悪から皆を守るヒーローの姿は、本当に貴く眩い。だから皆が憧れる。
だけど、知ってる?
ヒーローだって怪我するし
痛いし辛いし怖いこともたくさんある。
だから、負けるし
死んでしまう事も ある。
(だから、ヒーローなんて…ッ―――)
ヒ ー ロ ー な ん て
「…ッ」
アザミは唇をギュッと噛み締める。無意識に力が入り、じんわりと唇に赤色が差した。
「…ッ、アザミ!!テメェこっちこいやァ!!」
「ッ?!」
爆豪の怒鳴り声がしたと思えば、アザミは頭にバサッと何か被され視界が足元のみになる。そして強引な力で腕を掴まれピシャリと教室から追い出された。
「オイ、泣くならここで泣け!!」
爆豪はアザミをドンッと廊下の窓側へ追いやる。爆豪自身は彼女と少し距離を取り、腕を組み、そして窓へもたれる。アザミの頭に被せたそれは爆豪のブレザーのジャケットだった。
「聞いてんのか?!あ"ぁ?!」
「…泣か、ないよ」
「お前、今すげぇブサイクなんだわ」
「は…はぁ?!ブ、ブサ…っ?!」
「顔上げんじゃねェ!」
「ちょっ…!」