第2章 初恋のはなし
陣平くんと出会ったのは、小学3年生の夏だった。
「ねぇー!お姉ちゃんわたしのプリン食べた?!」
学校から帰ってきて食べようと思っていたプリンが冷蔵庫から忽然と姿を消していることに気づいたわたしは、リビングでテレビを見ていた5つ年上の姉に食ってかかる。
「さあー?研二が食べたんだろー?
私はプリンなんか食べねーよ」
「えー!またお兄ちゃんが犯人!?」
この間もわたしのチョコレートを盗み食いしたのに!!
そんな風に、兄に食べ物の恨みを募らせてメラメラ復讐心を燃やしていると、玄関のドアが開く音がした。
「あ!お兄ちゃん帰ってきた!」
3つ年上の兄が学校から帰ってきたと思い、玄関に走ってわたしは思いきり怒号をあげる。
「お兄ちゃん!!!!
わたしのプリン食べたでしょ!!!
ばか!!」
「…プリン?」
怒りに我を忘れ、わたしが怒鳴り散らした相手がお兄ちゃんじゃないと気付くまでに数秒かかった。
「お前、萩の妹?」
目の前にいたのは、お兄ちゃんじゃない別の男の子。
やんちゃそうな見た目で、ほっぺに絆創膏を貼っている。
「プリンだって、可愛いな」
そう言って笑った彼のその屈託ない笑顔に、小学3年生のわたしはあっさりと恋に落ちた。