第51章 死なせたくない人
朝、目が覚めるとわたしは泣いていた。
ついに、ついにこの日が来てしまったから。
夢の中では陣平くんと変わらず毎日を過ごしていて、それがリアルで温かくて、ずっと続けばいいのにと思っていたらあっけなく目が覚めた。
文字通り、夢から覚めた瞬間、涙が溢れた。
泣いちゃダメなのに。
絶対に大丈夫と、昨日から何度も言い聞かせているはずなのに。
今日、彼を救える可能性は何パーセントだろう。
いや、運命を変えると心に決めたじゃない。しっかりしろ、自分。
何度もそのやり取りを頭の中で繰り返し、不安で潰されそうな心を必死に奮い立たせ、わたしは身支度を整えると家を出る。
陣平くんと未来を生きてみせる。
そう信じているけれど…
けれどもしかしたら、彼を救えたとしてもこの家にはもう戻れない可能性はゼロじゃない。
もしもタイムスリップのゴールがこの日なら、彼を救った後わたしはここにはいられないかもしれない。
今まで通り、陣平くんと一緒にいられる保証はどこにもない。
だけどそれでも、彼を救いたいと思った。
陣平くんが生きる未来を彼に贈りたいと思った。
他の何を犠牲にしても。
それが、わたしのタイムスリップする前から今までのたった一つの願いだ。
深呼吸をして、ドアを開け、一歩外に踏み出しドアを閉めた。
行こう、たった1%でも可能性があるなら、わたしは陣平くんを救うんだ。
そして、わたしは歩き出した。
長い長い1日が今、始まる。